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アートのちカラ、デザインのちカラ

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2005年 08月 06日

ワインのラベル・デザイン─其の壱(1991年)

ある女性の描いた絵からイメージしたのは、ワインのラベルだった。
ワインのラベル・デザイン─其の壱(1991年)_e0031863_1727242.jpg
これは社会福祉法人東京コロニーが運営する障害者アートバンク(現アートビリティ:「才能に障害はない!」をモットーに、心身に障害のあるアーチストの絵画をポジフィルムにしてライブラリー化し、それを企業や自治体の印刷媒体に貸出、使用料を作家に還元することで、社会参加や経済的自立を支援している)の依頼で、「障害者アートバンクの可能性」という本のために障害者アートバンクの登録作家の中から僕が選んだ作品を使って、製品のデザイン提案をするということで試作したものである。

先ずは、障害者アートバンクと関わるようになったそのいきさつを簡単に説明しておかねばなるまい。
僕が、それまで勤めていたCIデザインのコンサルト会社から独立した時に、僕の担当していたクライアントの一つである日立クレジット(現日立キャピタル)のデザイン顧問を引き受けることになった。日立クレジットではCIを実施していく中で、自社のイメージアップやモラールアップの観点から、企業の社会貢献活動の一環として、障害を持ったアーチストの支援ができないかと考えていた。そして僕に国内の障害者アーチストの団体を調べコンタクトをとって、何らかの提案をして欲しいというのだった。
こうして、僕は障害者アートバンクの存在を知り、その若き情熱の塊のようなスタッフ達と幸運な出会いをし、今日まで関わりを持ち続けているわけである。
さて、障害者アートバンクを知るようになって間もない頃、当時築地にあった事務所を尋ねた時、この人の絵を見て感想を聞かせて欲しいといって見せられたのが、徳岡麻実子さんが描いたパステル画だったのである。
具体的なカタチをもたないそれらの絵には「絵を描く」という原初の感動と色彩に満ち溢れ、砂漠に降った雨のように僕の心に浸透していった。この時の感動が僕と障害者アートバンクとの関係を決定づけたといっても過言ではない。
彼女には出産時傷害により、重い知的障害があった。その彼女の絵を初めて目にした時、僕は彼女の心の無限なる宇宙を感じ、“情熱”とか“豊饒”という言葉が頭に浮かんだ。僕はこれらの絵を使って何かデザインしたいという強い思いに駆られ、僕の中でワインのラベルと結びついたのであった。

# by LunaSmileDesign | 2005-08-06 21:45 | ラベルデザイン